こういう経験をした人は、そういう人になる、という言い方はいかにももっともらしい。ボードレールは「幼いころに幸せのイメージをもてなかった人は一生それをもつことができない」と言っていたと小川国夫がよく言っていた。見方によってはおそろしい指摘かもしれないが、幼いころにしか得られないイメージがあると言っているだけで、幼いころに不幸を味わった人は一生不幸のままでいるしかないと言っているわけではない(それに「不幸」にもいろいろあるようだし)。人は自分自身の味わった過去ですら「印象」を書き換えて生きてゆく。数年前、「これまでの経験をいかさない」ということばを紹介してくれた人がいて、そのときのことをちょっと思い出した。これまでの経験は、これからのことに「いかす」ものじゃなくて、これからのことはこれからのこととして新たにやるほうがよい、隠し味のように「いきる」ものなのかもしれないなぁ。
0 件のコメント:
コメントを投稿